serendipity and connections born from painting 描き続けた絵がくれた、巡り合う出会いの輪|YUUKI
serendipity and connections born from painting 描き続けた絵がくれた、巡り合う出会いの輪|YUUKI

serendipity and connections born from painting 描き続けた絵がくれた、巡り合う出会いの輪|YUUKI

photo mariko kobayashi
text nico araki

2026.01.15

マルチクリエイターとして、音楽、ファッション、アート、デザインと、さまざまな創作フィールドに挑戦しているYUUKIさん。2024年まで、“NEOかわいい”をテーマに、コンプレックスや個性を肯定する新たな価値観を広めた4人組バンド「CHAI」のベーシストとして活動。仲間とともに作品を作る喜びや、自己表現の面白さを経験した。そんな彼女を幼いころから変わらず支え続けたのは、“絵を描くこと”だった。

YUUKI(ゆうき)

岐阜県出身。4人組のバンド・CHAIの元メンバー。ベースや作詞、アートワークなどを担当。2024年3月の解散後は、ファッションブランド〈YMYM〉で服やライフスタイルグッズのデザインを手がけるほか、アートイベント「Art Culture Street.」の主宰、アート作家としての活動など、多岐にわたる表現を行うマルチクリエイターとして活躍中。

instagram @_whoisyuuki_

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ひとりの世界に閉じた

絵を描く時間

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昨年、『世界はうつくしい ーThe World is Beautifulー』と題した個展を全国3ヵ所で開催したYUUKIさん。作家として活動するほか、ファッションブランド〈YMYM〉のクリエイティブディレクターや、マーケットイベント「Art Culture Street.」の主宰、SNSのマーケティング会社に所属するデザイナーなど、さまざまな顔を持つ。今でこそ人前に立って活動することが当たり前になった彼女だが、幼いころは大の人見知りで引っ込み思案。ましてや、作品を誰かに見せるなんて、恥ずかしくてできなかったという。

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「子どもの頃から“絵を描くこと”が好きでした。でも、とにかく恥ずかしがり屋で、絵を周りに見せることはありませんでしたね。誰にもバレないように一人のときにこっそりと隠れて描くんです。自由に創作したいから、ぬりえのように、綺麗に枠の中におさめなければいけない遊びは怖いと思っていたのも覚えています」

絵を描くことは、いつからともなく自然と身についた習慣だった。誰にも見せず、ひっそりと続けてきた。

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「これまで美術の学校を目指したり、絵で食べて行こうと思ったことはありません。絵を描くのがただ好きだから続けてきただけ。筆先が絵の具に触れると、なぜか解放される感覚があります。無心になれるし、頭を使わずに夢中になれる。私にとってリラックスできるのは、いつだって絵を描く時間でした」

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左から、『IMAGINE』、『わたしの泉』。緑豊かな岐阜県で生まれ育ったYUUKIさんの作品には、植物や月、太陽など、自然物のモチーフが多い。

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バンドで歌詞を書いていたからこそ、言葉も大切にしているYUUKIさんの作品には詩も添えられている。「詩は説明的になりすぎずに、作者の意図を伝えられるのが良いなと思って書いています。絵と言葉を行き来してほしいです」

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人生観を変えた

突然の悲しい別れ

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絵という自分だけの拠り所を早くから見つけた一方で、自分の存在意義を疑うほど、人生に対して後ろ向きだったという。

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「明確な理由があったわけではないけれど、物心ついたときからずっと人生を悲観した子でした。自分が生まれてきた意味がわからなくて、早く死んだ方が世のためなんじゃないかと漠然と考えていた。生きる価値がないのに生きてしまっているというギリギリの状態で歳を重ねていました。だから、将来の夢を持ったこともなかったんです」

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そんな考えに変化が訪れたのは、大学3年生に上がる春休み。ニュージーランドへの短期留学中、突然届いた訃報がきっかけだった。

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「人生を終わらせたいと思いつつも、とりあえずなにかを変えたいと海外へ渡った矢先、高校の同級生が亡くなったという知らせが届きました。異国の地で突きつけられたとても急な別れにパニックになりましたね。その子は、生前その場にいるだけで周囲を照らす太陽のような存在だったんです。当たり前にいた友人がもうこの世にいないという事実。どんなに素晴らしい命でも、強制的に亡くなってしまうことがあり得るのだとショックを受けました。そこで、ようやく“死”がどんなものかを理解したのだと思います。願っても願わなくても、いつかは“死”が訪れるわけで、なんで私はこんなにくよくよしているのだろうと我に返った。その別れを機に、いつか死んでしまうからこそ、今やりたいことを全部しようという思考回路に徐々に変わっていきました」

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バンド活動が教えてくれた

表現を共有する楽しさ

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“コンプレックスは、愛すべきもの”を掲げる4人組バンド「CHAI」が結成されたのは、その後のことだった。同じ大学に通っていたマナさんに誘われて加入したYUUKIさんは、なんと楽器を触ったこともほとんどなかったのだそう。

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「考え方が前向きになったものの、当時やりたいことが特になかったんですよね。だから、まずはきっかけがあったらチャレンジしてみるイエスマンになることにしたんです。そんなときに、バンドを組もうというお誘いがありました。他のメンバーはすでに楽器が決まっていたので、私は余っていたベースに。みんなの中で本を読むのも私だけだったから、歌詞を書くことになって、絵も描くからアートワークも担当することになり、どんどん求められる役割が増えていったんです。これまで率先して自分の作品を披露することがなかったので、初めてのライブでは、緊張のあまり号泣しましたね(笑)」

「いろいろ挑戦してみたら、意外とできちゃったんです」と語るYUUKIさん。その言葉は、チャレンジすること自体の大切さをそっと教えてくれる。初めての挑戦が重なっても立ち止まらずにいられたのは、バンド自身が掲げているメッセージの影響も大きかった。  

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「“コンプレックスは視点を変えれば武器になる”というメッセージを楽曲にしているから、作詞するときに自分自身と向き合う時間があって、そこでいつの間にかしがらみみたいなものが解けていった感覚はありました。それを音にして発していたら、自分にも返ってくるし、ファンの方からの共感の声にも勇気づけられました。絵を人に見せられるようになったのも、アートワークを担当するようになってから。『かわいい』と言ってもらえたり、チヤホヤされるのってこんなにも嬉しいものなのかと。もし批判されたとしても、自分が作ったものに共感してもらえる広がりの方が素晴らしいと思えたので、表現を披露することに対する恐れはなくなりました」

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本来はキャンバスとして使う木製の画版をYUUKIさんのパレット代わりに使用。絵の具を何層も重ねることで、作品のイメージが思い浮かぶという。

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「CHAI」は海外でも注目を集め、公演するステージも大きくなっていった。舞台上から見える光景も特別な景色だという。

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「バンドは、誰かと一緒に協力して一つのものを築き上げる楽しさにも気づかせてくれました。互いの得意、不得意を補完し合うと、自然と自身の強みも発揮できる。ライブも、自分たちだけで作っている場ではないと思っています。一つの音楽をみんなでシェアしてそのときの空気でテンポやリアクションが変わっていくのも面白い。実は、ステージからは客席も結構見えているんです。私たちの曲に乗ってカップルがチューしていたり、もはやこっちなんてそっちのけで激しいダンスをしている人など、思い思いに楽しむ観客の姿は、演奏する側にとっても一つのショーのように映るんです。きっと来場者の方は意識していないと思いますが、ライブはみんなの共同作業みたいなもの。そんなふうに、みんなで作りあげるクリエイティブな場が、気がついたら好きになっていました」

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クリエーションがつなぐ

巡り合う人の輪

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バンド活動を経て、多くの人を巻き込むクリエーションの喜びを知った彼女。ファッションブランド〈YMYM〉で服のデザインに挑戦し、マーケットイベント「Art Culture Street.」のオーガナイザーも手がけるようになった。すると、一人で描いていた絵にも、心境の変化が現れた。

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「絵を描く時間は一人だけれど、展示をして人に見てもらう先には、鑑賞者の感想があるんですよね。そこで共感してくれたり、気に入ってくれた人から新しくコラボレーションの話が生まれたり、いつの間にか私の知らない人にも届いていたり。“つながり”と“巡り”によって、人の輪が広がっていくことにやりがいを感じるようになりました」

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上京してから気になるアート作品にもよく巡り合うというYUUKIさん。「これはお気に入りの土器クリエイター、DOKI MIZUHOさんの作品です。バンド活動中の金髪ロングヘアの自分に似ているんです」

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こちらは、YUUKIさんが絵本の中で一番好きなページ。「鮮やかな色使いで描かれた景色は構図が素敵。見れば見るほど魅了されます。私もいつか絵本を描いてみたい」

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自分の絵を通して、いろんな人と交流できるようになったYUUKIさん。その輪は、広がり続けている。

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「例えば、荒井良二さんの絵本『あさになったのでまどをあけますよ』は、ファンの方が私の絵を見て『きっと好きだと思います』とプレゼントしてくれたもの。私の絵から、他の作家さんの作品を思い出して、それを私に教えてくれるという流れがとても嬉しかったんです。絵を描いていて良かったと思えたし、そういう巡り合わせが、これからまたいろんな形であったらいいなと思いました」

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花を纏った、粘土のスキンケア

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