a journey takes me to a new world 旅をしたから、今がある|nagisa
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a journey takes me to a new world 旅をしたから、今がある|nagisa

photo yuka uesawa
edit yasuko mamiya

2024.04.15

メイクアップアーティストとしての手腕はもちろん、ファッションやライフスタイルにも注目が集まるnagisaさん。『UNION MAGAZINE』の創刊人のひとりでもあり、国内外のクリエイターとタッグを組み、美しいヴィジュアルを発信し続けている。多彩な活動の源にあるのは、溢れるほどの好奇心。心赴くままに知らない場所に出かけてきた経験が、今の彼女の土台になっている。

nagisa(なぎさ)

メイクアップアーティスト。独立後、渡英。帰国後は、雑誌や広告を中心にさまざまな分野で活躍。『UNION MAGAZINE』ではメイクアップアーティストとして参加するだけでなく、創刊人のひとりとして制作にも携わる。YouTubeチャンネル『nagisa TV+』でメイクやファッション、ライフスタイルにまつわる情報を発信。

instagram: @nagisamakeup

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達成感を味わった

小さなバスの旅

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メイクの仕事に加え、YouTubeでの情報発信、雑誌制作にコスメの監修と、多岐に渡り活動するnagisaさん。子供時代の話を聞くと浮かび上がってくるのが、好奇心旺盛な女の子。その姿は枠を飛び越えて仕事をする現在の彼女とリンクする。

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「とにかく“自分でやりたい”という気持ちが強い子でした。バレエを習っていた5歳の頃、母親の付き添いなしでレッスンに行きたくなって。バスに乗って無事辿り着くと、ひとりでできたことへの達成感を得ることができた。それがすごく気持ちよかったんです。それからは、バスで1時間ほどかかる祖母の家にもひとりで遊びに行くように。小学5年生になると、英語教室に行きたいと親に申し出ました。海外への憧れも早くからあったので、いつか英語が必要になると子供ながらに思ったんでしょうね」

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やりたい、行ってみたい。そんなnagisaさんの気持ちを、両親はいつも尊重してくれた。

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「逆も然りで。中学生の時に、学校に行きたくない時があったんです。当時は教室の中で、みんなと一緒がよしとされていた時代。どうしてもそこに違和感を感じてしまって。両親は、私の気持ちを尊重して、休んでいいよと言ってくれたんです。今思えば、苦渋の決断だったはず。無理やり引っ張り出すことなく見守ってくれたことに、とても感謝しています。高校生になると世界が広がり、仲良しの年上のお友達ができたんです。彼女は美容師で、おしゃれ番長のような存在。ある時彼女にヘアメイクしてもらう機会があり、『私、これ好きかも』ってピンときたんですよね。調べてみたらメイクアップアーティストという仕事があることを知り、学校を見つけて。メイクを学びに東京に出たい、と親に話したら、反対することもなく、背中を押してくれました」

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いくつもの旅を共にしてきた『グローブ・トロッター』のスーツケース。ロンドン、パリ、NYなど都市に行くことが多いが、今興味があるのはスリランカだそう。

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壁を越え、成長した

ロンドン留学時代

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上京、というのも10代の子にとっては大きな壁になり得る。でもnagisaさんはホームシックになったことが一度もないというから、やはり強い自立心の持ち主だ。20代になると、メイクアップアーティストとしての可能性を広げるために留学を決意し、アシスタントをしながらアルバイトを掛け持ち。がむしゃらに働いて資金を貯めた。

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「『THE FACE』、『i-D』、『DAZED』など、イギリスの雑誌が好きだったから、留学先はロンドンに。師匠の紹介で、行って早々に『i-D』の撮影にアシスタントとして参加させてもらえたのはラッキーでした。でも困ったことも多々あって。当時は1ポンドが200円を超えていた時代。資金に合う安い語学学校を選んで行ったら、登校初日にあるはずの場所に学校がないんですよ。驚くことに、お知らせもなく引っ越ししていたんです。英語がつたなかったので、同じビルに入っていたケバブ屋のお兄さんにヘルプをお願いして学校に電話してもらい、やっとのことで移転先の校舎にたどり着いたのを覚えています。さらにはその学校、2ヶ月後には潰れちゃった(笑)。トラブルはたくさんあったけれど、ひとつずつ壁を越えていく手応えもあって。上京時と同じで、帰りたいと思ったことはなかったんです。今の仕事に繋がる人との出会いもありましたし、パートナーに出会えたのも留学時代。当時は貯金を切り崩しての生活だったからどんどんお金は無くなっていくんだけど、不安になることもなかった。同じようにお金はないけれど夢のある人がたくさんいて、焦りを感じさせないのがロンドンなんですよね。不思議な魅力のある街だし、自分に合う場所。帰国して東京を拠点にしてからも、何度も訪れています」

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ロンドン留学時代に出会ったパートナーらと創刊した『UNION MAGAZINE』。荒木経惟やマーク・スタインメッツ、オリヴィエ・ケルヴェンなど世界的に活躍するフォトグラファーと共に撮影したファッションストーリーが収められている。

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陶芸家、スティーブ・ハリソンの茶器は、ロンドン北部のアトリエに何度も足を運んで集めたもの。「作家本人に会って制作にまつわるストーリーをうかがったので、思い入れもひとしお。旅で得た宝物です」

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旅での経験や見聞が

自分を築く大きな要素に

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5歳でひとりバスに乗った時から、旅が好きな理由は一貫している。

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「やはり、自分の力で何かができた時の気持ちよさを感じられるから。“達成感フェチ”なのかもしれません(笑)。旅先で何かを乗り越えた経験が積み重なって今の私があると思う。だから私をつくるものをひと言で表すならば、旅ですね。独自の感覚を築くためにも、遠い場所に出かけるのは大事。美術館に行ってインプットするのも好きですが、知らない街は歩くだけで新しい感覚を得られる。海外の街に行くと、標識や建築の色使いが日本とはまるで違ったりしますよね。行動範囲が広がるほどに、アイデアの引き出しが増えるし、センスが培われるものだと思う。私は旅をするうえで食事とホテルを重要視しているんです。たとえB級グルメでも、美意識が行き届いているお店はある。旅先で食べるもの、泊まる場所をひとつひとつ選んでいく過程も、感性を磨くことに繋がるのでは」

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nagisaさんが近年旅に持っていく必需品の数々。『ビュリー』のコームや『スマイソン』のポーチ、『ラ ブーシュ ルージュ』のリップにはイニシャルや名前の刻印が。「自分にとっての“一軍”と旅したいんです。名入りのアイテムは愛着があり、あると心強いお守りのようなもの」

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いつになっても冒険心を

忘れない自分でいたい

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直感を大切にして、心赴くままに行動してきたnagisaさん。その経験が自信となり、その自信がまた、遠い場所に足を運ぶ原動力になっている。

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「留学、プライベートでの旅、海外での撮影など全部ひっくるめて言えることですが、自分のホームではない場所に行くと、予期せぬことが何かしら起きるもの。ひとつひとつ乗り越えて、場数を踏むうちに精神力が鍛えられ、『多少の苦難は、大丈夫』と、大きく構えられるようになりました。日々日本でやっている仕事だって、想定通りにはいかないもの。臨機応変に対応する柔軟さも、旅を通して得ることができたと思っています。東京で平穏に暮らせていることはもちろん幸せだしありがたいけれど、刺激が足りなくなって、冒険したくなる時があります。またロンドンに行きたい気もするけど、自然しかないような場所にも行ってみたい。昨年出産して親になったんです。かわいい子には旅をさせよと言いますが、自分の子もどんどん外に出て行ってほしい。私も着いて行きたくなってしまいそうですが(笑)、両親がしてくれたようにそっと見守らないとですね」

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