bridging imagination and reality 想像と現実の架け橋となる絵|青山明生
青山明生(あおやま・めい)
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コロナ禍の偶然
ワインボトルに描いた花
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青山明生さんが自身のブランド〈TOLIGHT〉をスタートしたのは約10年前。数年前から、自ら服に花の絵をペイントしたことで注目を集めるようになり、ブランドが飛躍するきっかけとなった。青山さんが絵筆を握ると、まるでそこに下絵が存在するかのような滑らかな動きで、瞬く間に花々が描かれていく。この花のドローイングはどんなきっかけでスタートしたのだろうか。
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「コロナ禍でステイホームを強いられていた頃、ちょうど引っ越したばかりでした。好きなインテリアに囲まれて暮らしたいのに、お店にいくことすらままならない。寂しいし暇だし、ちょっとでも華やかなものを部屋に置きたくなって、たまたま家にあったワインの空きボトルに絵を描いたんです」

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ガラスは描きやすい素材。コロナ禍以降たくさんのワインボトルに花を描いてきた。
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その写真をSNSにアップしたところ、思いがけずたくさんの反響があった。子供の頃から絵を描くことが好きで、高校時代からずっと描き溜めているスケッチブックもあったものの、紙ではないものに描くのはこれが初めてだったという。
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「驚いたと同時に嬉しかったです。ステイホームの期間が続いていたので、ワインボトルの次は、“捨てちゃうシリーズ”と題して、お菓子や食品、ティッシュケースの箱などにも描いてみました。その流れで、『服にも描いてみよう』と、同じように花の絵を描いてみたことが、その後の〈TOLIGHT〉の方向性を決めてくれたと感じます」
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青山さんが絵を描き始めたのは、物心つく前のことだという。
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「『紙と描くものを与えておけば静かになった』と母が言っていました。小さい頃から母に連れられて美術館も訪れていましたし、小学生になると、学校の美術の先生が週末に美術館へ連れて行って絵の解説をしてくれることもありました。思えば、絵と触れ合う距離は比較的近い環境だったと思います」


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スラスラと絵を描いていく青山さん。「本物の花の方が美しい」という考えもあり、青山さんなりにアレンジを加えた空想の花を描いているそう。「茎と花、葉の関係や、光の向きなど突き詰めたら実際とは違うかもしれないのですが、正しい花の姿には重きを置いておらず、あくまでデザインとして描いている感覚が大きいです」
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意識的に絵を描くようになったのは、いつ頃からなのだろうか。
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「思い返すと、小学校時代の自由研究は今に繋がるものがあると思います。ある年の夏休みには、『毎日カバンのデザイン画を描く』と自分に課したことがありました。その次の年は、帽子とアクセサリーのデザインをひと夏毎日描いたりしていました」
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高校生の頃になると、日常的にデザイン画を描き溜めるように。画家として額装するような絵を描くよりも、「用途のあるもの」をデザインすることに夢中だったという青山さん。気がつけばファッションのデザイン画を描くようになっていった。
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「高校はデザイン科に通っていたので、周りも美大を目指している人が多くて、絵を描く機会もたくさんありました。けれど次第に、自分がやりたいことは『アーティストとして1枚の絵を完成させてみんなに見てもらうこと』ではないな、と感じるようになったんです。アーティストは、自分が描いた外とは違う世界に周りを引き込む、入ってきてもらうイメージ。でも私は、自分がデザインしたものをみんなに使ってもらいたい、外の世界へ羽ばたかせたい、そんなイメージだったと思います。ちょうどファッションに興味を持ち始めていたことも大きいと思います」

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高校生から描き溜めてきたスケッチブック。デザイン画を描いたり、コラージュしたり、その時々のファッションへの想いを振り返ることができる。
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独自の世界観を生み出す
ファッションデザインの道へ
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「中高生の頃に、海外コレクションを紹介するテレビ番組『ファッション通信』を毎週楽しみに観ていたんです。ショー会場の素敵な空間の中を、モデルさんが優雅に歩く姿にとても惹きつけられたことをよく覚えています。さらにファッションブランドは服だけではなく、香りやインテリアなどあらゆるもので独自の世界観を表現しています。それを見て、『私がやりたいのはこれだ!』って思ったんです。グラフィックやインテリアのデザインは、クライアントからの発注を受けて作る側面が強いです。デザイナーという職業の中でも、世界観をまるごと作ることができるのはファッションデザイナーではないかと考え、美大でデザインの勉強をする選択肢もあったのですが、文化服装学院に進学することを決めました」
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希望の進学を叶え、充実した学びの日々。無事に卒業し、ファッションブランドのデザイン職への就職も果たした。しかしそこで、青山さんは、あることに気がついた。
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「日本のブランドでデザイナーに求められる役割には、シャツやスカートといった『製品』を作る部分が多く、ブランドの世界観やイメージをディレクションすることよりも、いかに服を作るかに重きが置かれています。思えば学校でも、服の歴史や構造について深く学びました。もちろんそれらは大切なことなのですが、その時の私の興味の中心はそこにあるわけではありませんでした。高校生の頃から変わらず、『世界観を作るファッションデザイナー』にこそ惹かれていたわけです。その乖離に、仕事を始めてから気がついたんです。その後、〈TOLIGHT〉を立ち上げた当初も、やりたいことをやっているはずなのに、『何か違う』と感じていました。初期は、卸を想定した量産型のアパレルブランドとして運営していたので、私自身が『世界観を作る』というアプローチを取れていなかったことに、後から気がつきました」

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花のドローイングが描き入れられた〈TOLIGHT〉の洋服たちが並ぶ。生地は同じでも、ハンドペイントを施し完成するため、どれもが一点物。
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自分で世界観を創出することに意識を向けていた青山さん。子供の頃から絵を描き、夢に向かって邁進してきた彼女だが、そもそも「自分がデザインしたものを皆が使ってくれる」というデザイナーの在り方に憧れを抱いたのは、いつ頃からだったのだろうか。
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「子供の時に大好きだった絵本が、一番のきっかけだと思います。『ももいろのきりん』という作品です。描いたものがなんでも本物になる紙が出てくるのですが、インテリアや食べ物などをその紙に書くと本物になるというシーンに、ものすごく惹きつけられたんです。『私もそれが欲しい! これがやりたい』というか。そんな気持ちになっていたと思います。ちょうど同じ頃、『ぐりとぐら』に登場する巨大なパンケーキの絵にそっくりのソファを、父に連れられていったブティックで見かけたことも覚えています。もちろん、たまたまた似ていただけなのですが、絵が現実になる、というストーリーに強く惹かれていた故のエピソードとして、今でも鮮明に覚えているんです」
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絵本から感じたあのワクワクした気持ちこそが、青山さんをずっと突き動かしてきた。
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「私にとって絵とは、『想像の世界と現実を繋げるもの』という意識が、その頃に芽生えたんだと思います。小さい頃から、絵を描けば自然にデザイン画のようになっていたのは、それが理由だと思いますし、だからこそファッションデザイナーが自分の進むべき道だと信じていたのだと思います」
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原点となった絵本『ももいろのきりん』。子供の頃からずっと大切に持ち続けている。
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飛行機やホテルに花を咲かせる
ドローイングから広がる未来
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〈TOLIGHT〉は現在、青山さん自らが描く花のドローイングを軸に、ファッションにとどまらず柔軟剤のパッケージなど、コラボレーションの領域をどんどんと広げている。
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「花を描いたワインボトルを投稿してからというのも、私のドローイングに興味を持ってくださる方が増えました。そこからコラボレーションやポップアップの機会に恵まれ、ブランドの核が定まっていきました。もともとは量産型のアパレルとして立ち上げたのに、今では正反対のハンドペイントが軸になっています。最近は服の他に、ミラーやオブジェなども制作するようになりました。ありがたいことに、「お店のウィンドウに絵を描いてほしい」といった服の枠を超えたオファーをいただくことも増え、空間デザインへと表現の幅に広がりが出てきたところです」
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花のドローイングで作り出す独自の世界観を軸に、アパレルの枠を越えて広がっていくこと。それは、青山さん自身がずっと望んでいた「デザイナーとしての在り方」が実現した形だ。これから先、彼女はどのような展望を描いているのだろうか。
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「アパレルからスタートしましたが、これからはまったく違うジャンルの人たちとの繋がりをもっと広げていきたいです。花を描くことで色々な分野と交わっていく、そんな目標を抱いています。たとえば、飛行機や車のような大きなものにもペイントしてみたい。そして最終的な夢は、ホテルをまるごと〈TOLIGHT〉の世界観でデザインすること。訪れた人の五感全てを刺激する、どっぷりとその世界に浸れる空間を作ってみたいと思っています」
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