that’s what loving organic cosmetics means 社会にも自分の心にも、フェアであろうとする生き方。|福本敦子
福本敦子(ふくもと・あつこ)
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偶然出合った
オーガニックコスメ
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「オーガニックコスメに出合ったのは、アクシデントみたいなものだったと思います。初めて手に取ったのは、〈WELEDA〉のバスミルクでした。本当にいい香りで、それまで使ったことのない化粧品だと思いました。さらに、パッケージ裏の成分説明を見て、人智学を創始したドイツの思想家、ルドルフ・シュタイナーの哲学に基づいて作られていることを知り、すぐに『興味ある!』と引き込まれたんです」
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福本さんは20代前半で美容師免許を取得し、美容室に就職した。しかし、1日中同じ空間で仕事を続けるスタイルに馴染めないことに気づき、退職。その後の人生を考えていた時期に、たまたま訪れたニューヨークで、〈Whole Foods Market〉にずらりと並ぶオーガニックコスメを目にして興味を持ち、さらに、黎明期の〈Cosme Kitchen〉の店頭で〈WELEDA〉と出合う偶然も重なった。「私の居場所はオーガニックコスメなのかもしれない」と閃き、同店で販売スタッフとして働き始めることに。

「当時の〈Cosme Kitchen〉は、オーガニックコスメを日本に広めていこうという始まりの時期でした。まだまだこの事業に関わるスタッフ自体が少なく、私はアルバイトの販売員という立場でしたが、海外ブランドの創始者やマーケッターなど、オーガニックコスメブランドの核に関わる方々とお会いする機会をたくさんいただきました。私が入った時点では、取り扱いブランドは2つほどでしたが、その後、海外メーカーや日本生まれのメーカーが続々と店頭に並び、現在の布陣が整う過程を間近に見ることができました。販売スタッフとしてサンプルをたくさん試すのは当然のことですが、それ以上に商品の背景やストーリーを深く理解することが求められました。日本にオーガニックコスメという市場が形成されていく先頭に立てたことは、本当に運が良かったと思います。市場が成熟しているいまでは、同じ立場で同じ経験を得るのは難しかったかもしれません」
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販売スタッフとして働き、マーケットの拡大を肌で感じながら、福本さんがオーガニックコスメに惹かれた理由は何だったのだろうか。
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「オーガニックコスメは、原材料となる植物を育てる畑を有機農法で整える必要があります。製品の効果や効能を追求するだけでなく、土壌の状態にも配慮しないといけないですし、資源が有限であることも理解しながら作られている。共に働く従業員を劣悪な環境に置かず、土地にも製品、従業員すべてに対してもケアする思想が根底に流れています。私はその“三方良し”の理念に共感しました。また、そうした理念ゆえに大量生産は難しく、利益追求に偏らない。利己的でなく、自然にも消費者にも公平なマインドで向き合うビジネスモデルにも惹きつけられました」

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フェアであることの重要性
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オーガニックコスメが現在のように定着する以前は、化粧品を購入するときに、消費者が製品背景を重視するケースはそれほど多くはなかったことだろう。
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「公平なバランスで物事に向き合う姿勢は、私にとって大切な価値観のひとつ。振り返ると、子供の頃から通信簿の公正・公平という項目だけは必ず丸がついていました。昔も今も頑固な面があり、納得していないことに従うことが苦手でした。適当に流されることが、下手かもしれません。もちろん、自分の意見を押し付けることも、相手にとってフェアじゃない。だから、私が発信するコンテンツでも誰かを説得しようという気持ちはありません。程よい距離感で思ったことを、自分の心に正直に話したい。それが、ブランド哲学をしっかりと持ち、それに基づいたビジネスを行うオーガニックコスメと相性が良かったのかもしれません。人や環境などバックグラウンドを大事にしながら、ピュアな自然の恵みを製品にする。それが社会にも影響を与える。その世界観が面白くて、それをもっと知りたいという好奇心に突き動かされてきたと思います」
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ブランド哲学に触れることこそが、福本さんをオーガニックコスメに引き込んだ一番の理由なのだ。
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「しかも、ブランドの理念を学ぶことがなにより面白かったんです。有機農法や月の満ち欠け、労働環境をケアする意味とか、オーガニックコスメブランドが大切にしていることが、そのまま私の興味や関心に結びついて、自然とのめり込む感覚がありましたね。知れば知るほど、オーガニックコスメの背景や意味を理解でき、お客様への伝え方にも熱が入りました。私のインスタを楽しんでくださった方の多くが、「#敦子スメ」での長文のコスメ紹介を気に入ってくださったと思うのですが、その投稿を書くときのように、感じたことを素直に製品の魅力としてお客様に伝えていました」
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福本さんは、Instagramでコスメの魅力や使い方を「#敦子スメ」というタグをつけて紹介している。この取り組みは、福本さんを形作る要素のひとつとして定着している。また、これまでの知見やライフスタイルをまとめた書籍の出版に加え、ランジェリーや恋愛に関するお悩み相談、さらには旅の経験など、コスメの枠を超えた幅広いコンテンツを発信している。福本さん自身は、活動の広がりをどのように捉えているのだろうか。
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「自分の思いつくままに気になったことを、それぞれコンテンツにしている感じです。マーケティング的な計算はしていないし、自分の見え方を考えて作ることもないんです。オーガニックコスメやランジェリーは、みんなにも知りたい部分があると思うのでシェアしていますし、恋愛相談は私自身も聞いていて面白いなって思う。元々、書くことも喋ることも好きで、面白い話が好き。自然と周りの友達も話好きで、愚痴や悩みも面白かったら続きを聞くくらいの感覚ですね」
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パートナーとの暮らしが
新章を開く
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哲学的な理念を深く掘り下げていく醍醐味が、オーガニックコスメにはあった。そして現在は、パートナーとの暮らしに、これまでにはない側面を興味深く感じる自分がいるのだとか。
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「この家のインテリアは、98%をパートナーが手がけています。一人暮らしの時は、私もインテリアにこだわりがありました。だから、誰かのセンスが混ざる空間に住み続けるのは初めてのことです。彼は日本の民芸品をはじめ、古道具や生け花などが好き。私も面白がっておまかせでレイアウトした結果、こういう空間になっていました」


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いくつも花が飾られているリビング・ダイニング。花の選定から生けるところまで、すべてパートナーによるもの。
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オーガニックコスメに限らず、生活におけるあらゆる選択に表れていた福本さんらしさが、唯一無二の世界観を作り、SNS上でも共感を集めてきた。だからこそ、自分のこだわりとは別の空間に暮らすことに、福本さん自身は違和感はなかったのだろうか。
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「これはこれで、不思議と心地いいです。自分のエッセンスが反映されてないように感じることもありますが、パートナーを選んだのは私ですし、そこに私自身が表れているわけですよね。この空間には間接的ではありますが、私自身もいるんだと思います。以前からYoutubeでルームツアーもやってきましたが、例えばパートナーがレイアウトしたこの家のどこを切り取ってコンテンツにするかは、私が考えて行います。少し編集者のような視点でこの空間を俯瞰している自分がいます。それは、数あるオーガニックコスメの中からどれを紹介するかを選ぶのと同じ感覚でもあります」
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パートナーによるインテリアづくりの中で、唯一福本さんが自分で整えた空間がメイクアイテムを並べた一角。福本さんにとって、いかにコスメが大切かをパートナーも熟知しているからだ。
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メイクアイテムをまとめて置いている棚。年々増えていくコスメを整頓。フレグランスやちょっとしたオブジェを飾り、家の中でも福本さんらしさが最も出ている空間。
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日本におけるオーガニックコスメ市場の歴史と共に歩みを進めてきた福本さん。活動が多岐に広がる中で、現在その存在はどのようなものなのだろうか。
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「なくてはならないものです。私の生活に根付いていて、切り離せないもの。自分をここまで成長させてくれたものでもあるし、いろいろな経験をもたらしてくれたものでもあります。コスメには流行り廃りがあると思うけれど、これからも長く残り、たくさんの人の日常に寄り添ってくれたら良いなと思っています」
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