montmorillonite museum vol.06「MO Lamp」| So Tanaka
montmorillonite museum vol.06「MO Lamp」| So Tanaka

montmorillonite museum vol.06「MO Lamp」| So Tanaka

photo takahiro idenoshita
text nico araki

2025.11.30

〈Pedal & Senza〉の主原料である“モンモリロナイト”を、アーティストの感性・視点を通して作品へと昇華させ、その新たな魅力と可能性に迫る連載「montmorillonite museum」。今回は、セメントや繊維板、アルミパイプなど、さまざまな素材からプロダクトを生み出すアーティストSo Tanakaの作品。原石の美しさをそのまま生かした照明器具が生まれた。

So Tanaka(そう・たなか)

2020年に武蔵野美術⼤学を卒業後、東京を拠点に活動。自然と人工物、文化の間にある関係性を捉え直し、現代的な文脈の中で再構築することを試みる。2019年に家具ブランドが主催するコンペティション「Roche Bobois Design Award 2019」にて『ORI Console』が受賞。2023年にデザイン&アートフェスティバル「Designart Tokyo 2023 Under 30」で『Vnsh』が受賞。2024年、プロダクトデザインの国際コンペティション「Kokuyo Design Award 2024」では、『Memento』が優秀賞を獲得。

instagram:@s_o_tanaka

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〈column on montmorillonite〉

加工に適した
モンモリロナイトの構造
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モンモリロナイトをはじめとする
多くのクレイは規則正しく並んだ
層状の結晶構造をしています。
その層と層は静電気の力で繋がっているため
物理的な力で比較的簡単に剥がれたり、
削ったりすることができます。
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特に国産に多いNa型のモンモリロナイトは
水分を層間に保持する力が強く、
原石の一見乾いたように見える状態でも
層間に存在することが
加工のしやすさにつながります。
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原石の魅力を

ストレートに伝えたかった

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制作に取り組む前に、So Tanakaさんは〈Pedal & Senza〉の製造現場を見学しに行った。まずは素材そのものがどのように生まれ、どう扱われているのかを自分の目で確かめたいと思ったからだ。しかし、知れば知るほど奥深いモンモリロナイト。作品の方向性が決まるまでに時間がかかったという。試行錯誤した結果、今回は素材の美しい見た目に着目した。

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「実際に見て触れてみると、石なのに冷たさを感じないことに驚きましたね。硬さと柔らかさの中間にあるような不思議な石材。はじめはそのユニークな特性を活かそうと考えていました。たとえば、紙やグラスにつけた水滴に、モンモリロナイトの粉をふりかけて乾かす実験をしました。時間が経つと形がそのまま残るので、なにか応用できないかと考えていました。〈Pedal & Senza〉のハンドクリームを使ったときに、肌が深呼吸する感覚があったので、その性質も面白いなと思ったり。あとは、何万年先の人類にもこの石の使い方がわかるように、DNAの配列を使った暗号で書いてみる、という案もありましたね。でも頭でっかちすぎる気がして、恥ずかしくなってやめました(笑)。そうしてじっくり構想を練りながら、最終的にコンセプチュアルなアプローチよりも、原石そのものの美を際立たせる表現に着地しました」

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「アイデアのストックがたくさんあるんです」というTanakaさんの部屋には、制作途中のオブジェや素材が自由に並んでいる。写真右にある、色紙の色を写したセメントのオブジェは、偶然にもFélicia Atkinson『Space As An Instrument』のレコードジャケットと色調がマッチしたのだそう。

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細く切った繊維板(MDF)を組み上げた3次元格子構造の『Liminal Objects』は、Tanakaさんの代表作の一つ。

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「モンモリロナイトは、スキンケア製品や日用品、土壌にも含まれていて、実は形を変えて知らず知らずのうちに触れている、とても身近な素材。だから、その原石そのものをプロダクトとして残すことにしました。調べてみると、一般的な鉱物に比べて非常に薄い板状の粒子が何層にも重なってできている。その構造ゆえに、割れた断面にはナノレベルのテクスチャーが現れ、細かい表情を見せてくれる。その魅力を光の陰影で引き出すことにしたんです」

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温かな光に照らされて、モンモリロナイトの微細な表情が浮かび上がる。

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加工して見えた

石材としての可能性

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大学の卒業制作では、エキスパンドメタルに極小LEDチップを埋め込んだ『Less Than Instrument』(2020)を発表。その後も『Vnsh』(2023)という作品を手掛けていて、今回のモンモリロナイトを使った作品は、照明器具としては3作目にあたる。

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「照明器具は、暮らしの中で当たり前のように使われているものだけど、その“光”があることによって私たちはさまざまなことを認識できています。“光”という存在に興味を持ってからは、照明という形に落とし込む作品が増えてきましたね」

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さまざまなプロダクトを制作してきたTanakaさんだからこそ、毎回はじめて触れる素材や道具を扱うことで、新しい発見がある。

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「今回はラフを描いたりせず、頭の中の設計図を頼りに制作していました。切削する前に、粘土で仮付けすれば、大体の配置のバランスを確認できるんです。通常硬い石材は業者に頼まないと加工できないものですが、モンモリロナイトは削りやすく、とても扱いやすかった」

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光を反射させるアルミニウムの円盤の裏側。モンモリロナイトを切削し、角パイプを埋め込んで構造を支えている。

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今回の制作では、LEDライトを通すための4mmのコードやはんだこて、糸鋸などの道具を使用した。

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素材×形の掛け合わせで

石の個性を強調

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出来上がったのは、モンモリロナイトを土台にした間接照明。アルミニウムの円盤の裏からLEDのやわらかな光が壁や石の表面を照らす。一瞬、逆光で表面がよく見えない丸いプレートは、なんの素材なのか判別がつかない。その様子は、どこか不思議で神秘的だ。

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「この石の不規則なフォルムを際立たせたくて、幾何学的な形を合わせました。光は放射状に広がるので、その中心に円を配置すると調和します。また、この角張った形に対して、丸いフォルムを添えることで、意図的にコントラストを生み出したかったのも一つの理由です。実は、荒々しい断面をもつ石と、優雅な傾斜を描く石を用いて、二点制作しました。どちらもいい具合に個性が際立ち、気に入っています。普段あまり自然物を取り入れてこなかったのですが、今後もこうした組み合わせを研究していきたいと思いました」

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presented by

花を纏った、粘土のスキンケア

〈Pedal & Senza(ペダル アンド センツァ)〉は、ミネラル成分である稀少な粘土「モンモリロナイト」を主成分として、香り豊かな植物を組み合わせた天然由来のコスメです。自然の移ろいに寄り添いながら、巡りゆく日常に美しいうるおいをもたらします。