montmorillonite museum vol.04|伊藤 紺
montmorillonite museum vol.04|伊藤 紺

montmorillonite museum vol.04|伊藤 紺

visual work tetsuya nagato
text hiroko ishiwata

2025.02.28

〈Pedal & Senza〉の主原料である“モンモリロナイト”を、アーティストの感性で作品へと昇華させ、その新たな魅力と可能性に迫る連載「montmorillonite museum」。今回の作家は、歌人・伊藤紺。日常の情景や感情を丁寧に紡ぐ彼女が詠む、モンモリロナイトの短歌。

伊藤 紺(いとう・こん)

歌人。1993年、東京都生まれ。2016年から作歌を始める。2019年『肌に流れる透明な気持ち』、2020年『満ちる腕』を私家版として刊行。2つの歌集が注目を集め、2022年両作の新装版を短歌研究社より同時刊行。現在は商業施設、ギャラリーでの特別展示や雑誌など幅広いフィールドで活躍。最新刊は『気がする朝』(ナナクロ社)。

instagram @itokonda

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なまえってふしぎなほうが

長く続くような気がする

明るいから

この世のほとんどのものには名前が与えられていて、名前がもつ響きと実体は常にそのイメージを更新し合っている。名前とは、人間が世界と長くかかわり続けるために編み出した魔法だ。

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モンモリロナイト。このふしぎな名前が、粘土のもつ仕組みや効果、微細で白く美しいその姿と混じり合い、わたしの心にイメージを結ぶ。

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意味で埋め尽くされていない「ふしぎさ」には余白がある。そこがぼんやりと、まるでレースのカーテンのように世界の光を通し、印象が心に焼きつくのだ。

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〈column on montmorillonite〉

モンモリロナイトの名前の由来

モンモリロナイトの名称は、フランスのヴィエンヌ県にある「モンモリヨン」に接尾語の「-ite」が付いたことに由来します。この「-ite」は、ギリシャ語の「λίθος(lithos:石)」を起源とし鉱物や化石の名称に広く使われています。たとえば、同じ粘土鉱物の「イライト(illite)」や化石の「アンモナイト(ammonite)」などが挙げられます。化石も粘土鉱物も、長い時間をかけて形成される自然物であるという共通点が、「-ite」という接尾語に象徴されています。

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