montmorillonite museum vol.02「インスタント・クロマトグラフィー」|石塚元太良
art work & photo gentaro ishizuka
2024.10.30
石塚元太良(いしづか・げんたろう)
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—— 「クロマトグラフィー」とは、なんですか?
クロマトグラフィーは物質を分解する技法のこと。物質の大きさ、吸着力、疎水性(水に対する親和性が低く水に溶けにくい、あるいは水と混じりにくい性質のこと)、電荷などの違いを用いて、気体から固体、液体などの移動相の状態ときに、成分を分解する化学的な実験方法のひとつです。
もともとは、20世紀初頭にロシアの植物学者ミハイル・ツヴェットにより発明されました。ギリシャ語で、“色を分解する”という意味の言葉から、「クロマトグラフィー」という名前がつけられたそうです。
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水などの簡単なものを使って行う実験から、「ガスクロマトグラフィー」、「超臨界流体クロマトグラフィー」など大掛かりな設備が必要な実験まであります。
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今回の作品制作では、まずモンモリロナイトを溶かした水をバットに用意する。そこに、数種類のカラーペンのインクを垂らしたろ紙を浸すと、インクが水に溶け出し、色が徐々に分解されていく。すると、分解された色彩が繊細に混ざり合い、ひとつのイメージが浮かび上がってくる。このときモンモリロナイトは、触媒としての役割を果たすとか。
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—— この作品を作ることにした理由は?
現在、自身でカラーフィルムを製作するプロジェクトを行っています。その過程で、市販のカラーフィルムの成分を、クロマトグラフィーを用いて分解解析することが可能かどうか考えていました。後日、その成分についての情報を工学論文から発見したので、実験自体は棚上げしてしまいましたが、頭の片隅にクロマトグラフィーへの興味が残っていました。
今回の制作依頼を受け、モンモリロナイトについて調べていくうちに、クロマトグラフィーの触媒(化学反応の速度をはやめる作用をもち、反応後もそれ自身は変化しない物質)としても使用されていることを知りました。そこで、この制作にぴったりなのではと思い、身近にあるカラーペンの色の分解に挑戦してみました。
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実験に使用したカラーペン。同じ色でも、メーカーによって色の分かれ方が異なる。さまざまな種類のペンを使うことで、偶発的な作品に仕上がっている。
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—— ご自身の写真作品との関連性はありますか?
写真とは、まさに200年前に発明された科学的なインスピレーションの産物です。ものを分解していく過程で抽出され、多くの実験の中から掛け合わされた物質たちが、画像そのものを瞬間的に写しとることに成功した魔術のような所作なのです。
ものを科学的に分解していく。そんな「アナログ」なしてんが、ものの美しさを昇華させ、際立たせることもあるのだと改めて思いました。
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世界中を旅して撮影する石塚さんのアトリエには、ナミビアやニュージーランドなど、各国から持ち帰った鉱物が置かれている。モンモリロナイトも鉱物の一種だが、ここにはもっと硬くてカラフルな石が多い。
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